2011年8月31日水曜日

東大生は「世界記録のマインスイーパー」に出会った.第2回i.schoolワークショップ⑤


今回DAY 5では私が同行したもう一つのエスノグラフィ,
マインスイーパーで世界一の記録をもつ女子校生(当時)について紹介する.

DAY 5 ETHNOGRAPHY II "WORLD RANK MINESWEEPER"
目的:エスノグラフィを行う
手法:エスノグラフィ
ステップ①「インタビュー」
ステップ②「エスノグラフィ」

ステップ①「インタビュー」
果たしてどのようにして彼女はマインスイーパーで世界一になったのか.
そこにたどり着くまで彼女のなかでゲームというものがどう変化していったのか.
そのインタビューの一部を紹介しよう.

A. マインスイーパーと出会う前の話し
彼女のゲームとのはじめての出会いから,
最初に最もハマるダンスダンスレボリューションになぜ彼女はハマったのか...

>得意なゲーム・最近アツイゲーム
マインスイーパー,ダンスダンスレボリューション,
ドラマニ(音ゲー),ドラクエ・FF.
ちなみにmobageやグリーは一切やらない.
最近はKinnectがアツい,あれはぜひ欲しい.

>幼い頃から音楽をストイックにやっていた
小さい頃からピアノ・フルートはやっており,
親が先生だったのもあり特にピアノは小さいころから
かなりストイックにやっていた.(2〜3歳くらいから)

>ゲームとのはじめての出会い
周囲に刺激されてはじめたのがたまごっちだが,
本格的にゲームをはじめたのはおそらく小学校のときに出会ったポケモン.
親もゲーム好きでスーファミのマリカーを一緒にやっていたりした.

>ダンスダンスレボリューション(DDR)が大きな転機
転校した先(京都)の学校でDDRが流行っていた.
転校生はいじめられていたりしたことからストイックに練習した.
リアルに朝から晩までやっていた.親には特に注意はされなかった.
二小節をリピートして練習したりしていた.
小学生の時は土日は9時〜17時でDDRをやり,
平日には友達の家で発表みたいな感じで披露する生活だった.
小5がピーク,学校を転校してからは遊ぶことは減っていった(東京に転校).

それでも受験はあったりしたが,土日に1時間はやってた.
中学高校進学後は後楽園で一般人がDDRやっているものを見て
「いつかデビューしたろ!」と思っていた.

B. マインスイーパーと出会ってからの話し
しかし,そのままDDRはもうあまりやることはなくなった...
なぜならそのときから彼女には新たなゲームへの挑戦があったからだ.

>「マインスイーパーは運ゲーム」
親がパソコンを買ってきて,元々はパソコンに最初から入っているゲームである
ソリティア → フリーセル → ハーツを順番にやっていた.
そしてその次にマインスイーパーへと移った.
しかし当時小3だったため最初は「運ゲー」だと思ってた.

>「マインスイーパーは時間つぶしゲーム」
中学に入ってからYahooメッセンジャーで友達とのチャットがはやりはじめた.
友達にもマインスイーパーが強い子いて,燃えてしまって.
メッセでチャットを待つ間に1ゲームやっていた.
23時〜毎日夜中の2時〜3時ぐらいまで.
目標とかなくてただひたすらに暇つぶしでやっていた.

>「マインスイーパーは競技」
中3〜高1の頭くらいに当時流行っていたサイトがあって,
はじめて時間的な競争があることを知り,世界の上位が争うようになった.
そこで23時〜3時頃までマインスイーパーの毎日開始.
授業中ずっとパソコンでやってた.

「私の時間なんかいくらでも差し出します」
「ひとりでしこしこやってた」
「もはやチャットはおまけ.たまにチャットするだけ」

そして高2でついにマインスイーパーの世界チャンピオン保持者に.
当時の記録は43秒代.(ちなみに今の世界記録は37秒代らしい)

>「マインスイーパーは自分へのご褒美」
少しづつ勉強しなきゃ.部活やらなきゃ.という思いから気持ちが変わっていった.
それでも高3の頭くらいまで,受験と並行してやっていた
当時はこの問題集1ページやったらマインスイーパー10分やろうみたいな感じだった.
大学入ってからはやらなくなった.

C. マインスイーパーについてあれこれ
なぜマインスイーパーなのか?
彼女がマインスイーパーに対してもっている情熱や魅力を語ってもらった.

・「手軽にできて,終わるのが良い」
何故マインスイーパーかというとやはり1分という短い時間で終わるから.
上級も早くなると1分切る.
そのためには升目のパターンを覚える.(頭の中に定跡が記憶されている)
マインスイーパーの定跡を集めたページとかがある.

ただし上級で物足りなくなると,マニアサイズをやる.
一画面を覆う大きさ。爆弾の数なんと1111個!(上級は99個)
だいたいマニアサイズだと1時間くらいクリアするのにかかる.

・「ハマったと感じるときはいつか」
自分がはハマったなって感じるのは,完全に時間を忘れたとき.
実は気づいたらやっていることも多い.
やりたくてたまらないと思うと,電車の中でも升目が目に浮かんだりする.

完全に中毒好きすぎて辛い「好きすぎて辛い,でも好き!」

・「自分でなんとかできるところと,自分でなんとかできないところ」
最終的に運のところもある.出来るところと出来ないところがある.
イラッとしないのかと聞かれると「しない」と答える.
いかに自分でなんとかできるところを最大化するかがポイント.

・「マインスイーパーに出会う前と後では何が変わったこと」
時間の使い方が圧倒的に下手になったことと,勉強にはスーパー支障出たこと(笑)

・その他
友達にはマインスイーパーをすすめるけど一蹴される.
単純なゲームは一生なくならないだろうなあと思う.
子供はハマらない子が生まれてきて欲しい.無機質なままでいてほしい.
ちなみにゲームがなかったらその時間は寝た方が良い.

ステップ②「エスノグラフィ」
今回も彼女が普段やる状況と全く同じというわけにはいかなかったが,
彼女が愛用しているマウスをもってきてプレイしていただいた.

・マウスを選ぶ基準
赤外線が軽くて良く,基本的にフィット感感覚的に選んでいる.
無線だと反応が遅いため有線は絶対.

「いままでマウスは3個くらい壊してます」

1個目 → マウスが摩耗した
2個目→ ころころが摩耗した
3個目 → 押しすぎてばこっといった
彼女いわく「マウスは繊細なもの」とのこと.

また過去にマインスイーパーでよく腱鞘炎になっていたという.
そのためにリハビリもし,今でも右手の握力の方が強いとか.

さて,彼女のマインスイーパーをプレイしてもらっているときに気づいた
面白いと思う事実を3つほど紹介しよう.

・「”あいうえお”で特訓」
これは彼女自身が生み出した特訓法であり,ものすごくシンプルだ.
メモ帳を開き,そこに「あいうえお」と打つ.
あとは自分でランダムで「あ」,「え」と思い浮かべ,
その文字にカーソルをもっていてクリックをする.
ひたすらこれをやることで正確なクリックを身につけるのだ.
このような単純作業も全てはマインスイーパーのため.
これには私も非常に驚いた.

彼女がするミスは全てクリックによるミスだと彼女は言う.
だからこそ,彼女にとってこの地味な練習は非常に重要らしい.
ちなみに彼女はクリックの音で自分のいい感じを把握しているため,
プレイ中には特に音楽などはきかないそうだ.
40秒にいかないなあと思ったらもうやめてしまう.
それはクリックの音の速度で把握しているという.

・「クリアすることは目的ではない」
実際今回プレイしてもらった際には,達人であるはずの彼女も,
何度何度もミスをしてクリアできずにいた.
しかし,それは全てマウスのクリックミスだという.
つまり,彼女はあまりのクリックの早さで手を滑らしてミスをしてしまうだけで,
クリアを目的にした場合余裕でできてしまうのだ.
補足するが一般人には上級はクリアするだけでも,かなり難しい.


・「居場所を忘れる」
実際に今回マインスイーパーをやってもらっているときも,
なにも言わなければそのままずっとやっててもらえるのではないかと思うほど,
居場所を忘れはまり込んでいた.
エスノグラフィしている私たちのことも忘れたようだった.

<まとめ>
最後に今回のマインスイーパーの言葉で非常に印象に残った言葉を紹介したい.

いまはもうマインスイーパーをやめた彼女だが,たまに復活するときがある.
それは落ち込んだときだ.例えば失恋したときにはマインスイーパーも復活する.
そして再び一ヶ月ほどやり込むと,
マインスイーパーだけはあるなと思って社会復帰するとのこと.
彼女にとってマインスイーパーは拠り所がになっているのだ.

「あなたにとってマインスイーパーとは?」

ひたすら自分と向き合い続けるゲーム.
写経みたいな感じ無心になれるゲーム.
そして,
「自分との対話の時間.」

それが彼女にとってのマインスイーパー.

当時,女子高生としてマインスイーパーの世界記録をもっていたも今では,
東京大学で勉強に励む女子大生.
非常に話しやすく,しっかりとした意見をもった素敵な方だった.

ありがとう世界記録マインスイーパー!これからの活躍に期待しています!

以上で2名のエクストリームユーザに対するエスノグラフィをは終了だ.
雰囲気は掴めただろうか.

エクストリームユーザにインタビューをお願いするまでは非常に難しいが,
実際にエスノグラフィをすると本当に刺激的であり,学ぶことだらけだ.

次回からはこのエスノグラフィをいかにアイデアに落としていくのか.

アイデア創造への下準備を"DKF"で構造化する.
"DKF"とはD=Downloading, K=Keyword化,F=Framework化
の3ステップであり,各ステップを詳しく説明していきたいと思う.

東大生はエスノグラフィの構造化に取り組んだ.第2回i.schoolワークショップ⑥へ続く...



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