2011年6月15日水曜日

「デザイン思考で世界を変える!日本,そしてi.school生に期待すること」IDEO社CEO Tim Brown × 東京大学i.school


前回はIDEOからのi.school生への質問だったが,
「10年後の日本はどうなっているか?」IDEO社CEO Tim Brown × 東京大学i.school
今回紹介するのは,
①IDEOは日本でどういうことをしたいか?
②日本人の強みとはなんだと思うか?
③なぜ市場が縮小している東京で再びオフィス設立することに至ったのか?
④ビジョンは重要視する企業一緒に働きたいというが,IDEOのビジョンはなにか?
⑤i.schoolで学んでいる学生に対する期待はなんでしょうか?
を中心にi.school生からIDEOに対してされた逆質問だ.

今回は基本的にディスカッションの全てを書き下ろした.
そして,前回同様に日本語に訳して書いた.
IDEOとi.school生でどういったディスカッションが展開されたのか,
その雰囲気が伝われば幸いだ.

学生によるIDEOへの逆質問①
IDEOは日本でどういうことをしたいか?

>IDEO社員
IDEOの社員はみなスマートだが,
もっと日本を探索して,知って,学びたいと思っている.
昔といまではIDEOも変わったし,日本も変わったと思っている.
例えば,私は震災前少し前に来日したが,震災後と比べて急激な変化があった.

昔は仕事のクライアントとして大企業と一緒に多くやってきた.
しかし今後より興味があるのはより中小・スピンオフやアントプレナー.
きっと今後の日本の成長というのはこういった中小・スピンオフ,
アントプレナーにかかっていると思うからだ.あと,そして教育にもね.

>ティム
このことは日本だけではないよ.世界のどこでも当てはまることさ.
いま一番興味があるのは,世の中の問題とアントプレナイズムがぶつかるところ.
でも基本的に私たちはなににでも興味がある.
大きな機会には新しいビジネスチャンスにあることなら.
また私個人としは,意義・ビジョンがある企業に興味がある.
お金だけでないと思ってる.なぜなら私はそれが人生において重要だと思うからさ.

学生によるIDEOへの逆質問②
日本人の強みとはなんだと思うか?

>IDEO社員
技術は強い.でも技術だけじゃないね.やはりすごいのは日本の文化だ.
それに加え日本人の考えたかたはすごい.
特におもてなしの文化はすばらしいと思う.あとわびさびとかもね.
これらは英語には訳すことは難しいが、非常に意味が深い言葉だ.
日本は世界でも最も社会的な国だ.
こういった既存の文化を活かしたビジネスをどう展開できるかに興味がある.

>IDEO社員
日本人の物事に対する執念にはすごいものがある.
こういった力は企業のスタートアップには必ず活かせると思う.これが非常に重要だ.

>IDEO社員
日本のものにはパーフェクションがある.
ただ問題は新しいものを世の中に出すときに,
必ずパーフェクションを狙うわけにはいかないということ.
パーフェクションを狙ってばかりだと,市場の変化に間に合わない.
たしかにパーフェクトは大事だけど,これは他の国に負けてしまう.
これはコインの表裏と同じかもね.これを国としてブレンドをどうするか.

>ティム
日本における質というか,私はエクスペリアンスエンジニアリングと呼ぶのだが,
それは本当にすばらしいと思っている.いつも楽しませてもらっている.
日本における経験は世界のどこの経験よりもすばらしいのだ.

たとえば日本のエアコンの例をあげよう.
アメリカのホテルのエアコンはうるさくて仕方がない.たいてい私は電源を切る.
でも日本のものはすばらしい.電源が入っているかどうかもわからないぐらい静かだ.
日本はパーフェクトだ.美しい.
全ての経験はエンジニアリングによって完成されている.

世界の全ての文化が自分たちの特徴があり,役割があると思う.
どの企業もシリコンバレーのようにアイディアが創出される必要はないのだ.
そういった意味で日本のエンジニアリングエクスペリアンスこそ
世界で活かされるべきだと私は思っている.

たとえば,グリーン技術.
その力はどこよりもいいものになるのではないか.マテリアルがそうだったようにね.
日本のエンジニアリングエクスペリアンスの高さこそ世界で活かされるべきである.

>i.school生
この話しは非常に興味深いと感じた.
なぜならいま日本は完璧主義、質の高さを追求しすぎる点に
反省しているという話しを良くきくからだ.
いままではいいものを作れば売れる.だからすばらしいものを作っていた.
でも、それを輸出するとやはりその国のカスタムに適していなかったり,
もしくはスペックが高いために値段が高すぎるということが指摘されている.
今回の話しを聞いて日本の物事を追求することに対するバランスが
重要になってくるように感じた.

>IDEO社員
質が求められている地域に今後は輸出するべきかもね.
あと日本のエンジニアリングエクスペリアンスの高さをどのようにわかってもらうか.

>IDEO社員
車でもやってきたわけじゃないか.きっと他のものでもできるはずだ.
ホテルやヘルスケアなどではぴったりなのではないかな.
日本にいると全て質の高さが求められる不思議な感覚がある.
ただそれを必要としているターゲットをどうやってさがすかが課題かもしれない.

>IDEO社員
いま日本が経験している震災は日本にとって,
なにが本当に必要か考える機会を与えている.
きっとこの経験はこれからの変化は世の中に活かせるはずさ.

政府に対する考えが変わって,
ボトムアップアプローチへの変化になっているのにも興味があるね.
これによって様々な変革がおきるはずだ.

学生によるIDEOへの逆質問③
なぜ市場が縮小している東京で再びオフィス設立することに至ったのか?

>IDEO社員
たしかに日本は数年前までそういった変化に対する議論が多かったのかもしれない.
しかし,いまはそれより日本は世界の舞台から取り残される危機感に興味がある.
私たちは日本人が変わりたいと想いがあるのだと学生や企業と話し感じた.
これは大きなチャンスであると感じた.変わりたいと思うこの気持ち.
これは震災以前から考えていたことだ.

>ティム
たしかにそれもあるとは思う.だけど答えはもっと単純さ.
だってここにいるのが好きなんだもの.
"Because We Like Being Here!!"

クリエイティブになるためには,好きな場所にいた方がいいだよ.
私の考えでは日本にチャンスがあるからきたというわけではない.
クリエイティブとして刺激のあるところにいくのが私たちだ.
ある意味わがままかもしれない.

過去に日本を去ったときは別の理由だ.
それに日本は昔と大きく変わった.20年前私がここにいたときと違う.
当時は大企業の力が絶対だったし,視野も狭かった.
でもいまは変わってきている.とにかくこれが楽しみだ.

>IDEO社員
いま日本では世代交代が起きているように感じる.
そしてこの流れは今後進むのではないかな.
ぜひこういった世代交代が起きているところに身を置きたいと思っている.

学生によるIDEOへの逆質問④
ビジョンは重要視する企業一緒に働きたいというが,IDEOのビジョンはなにか?

>ティム
上位層で考えた場合,一番だとインパクトがあるものをやることだと私は考えている.
私たちはデザインは世界でインパクト与えるものだと考えているし,役割があると思う.
いくつかの行動でインパクト与えたい.

①ただ大企業と仕事をするだけなく,利益を設けないIDEOも始める予定だ.
デザインツールやイノベーションツールを社会的セクターにも提供して,
その考えを広げようと思っている.デザインで貧困も救いたいのだ.

②とにかくみんなにデザイン思考の考えを広げたいのだよ.
今ここに私たちが君たちと一緒にいるのもそう.
自分たちでももっているのに興味はない.
教える理由もそう,d.schoolつくったのもそう,オープンIDEOを設置したのもそうだ.

全ては同じ動機で成り立っている.それはデザイン思考を世界で広げること.
これははじまりに過ぎないかもしれない.
ただ一つ言えるのはこれに対して私たちが「情熱」をもっていることだ.

学生によるIDEOへの逆質問⑤
i.schoolで学んでいる学生に対する期待はなんでしょうか?

>ティム
それはもう期待していますよ.
今後はi.schoolのような教育の取り組みの重要性を増すだろう.
多くのバックグランドから構成されたチームで総合的に問題解決するというのは,
いま世界で広まりつつある光景である.

ただもっと重要なのは,ここから学んだことを将来使うことだ.
なのでここにいる際は難しい課題に取り組むべきだ.
いろいろな人と一緒にどうやってうまくやるかを学ぶべきだ.
問題解決に新たな方法を解くことを考えることだ.

それを使って世の中に大きな変化をもたらしてもらいたい.
自分たち,そして世界の人々のためにね.
きみたちは最先端にいるんだから,それを活かしてもらいたい.
それがみなさんをワクワクさせるだろう.
私も若いころにi.schoolやd.schoolのこういった場があったらよかったな.

>IDEO社員
いまみなさんは「自分たちのために」学んでいることが多いと思う.
でもいつかそれはある点で自分から他の人たちへなにができるかへと変わる.

学んだことをどうやって広げるか?
ここで学ぶ機会の無かった人々に学んだ考えやインパクトを提供するか.
インパクトが自分から他の人へ変わるということだ.

他の人にどうやってそれを教えるか?どうやって多くの人を巻きこむか?
みなさんが学んだ知識をどうやって広げるか.
自分だけにしないこと.その魅力的を感じてもらいたいと思う.

以上が学生からIDEOへの逆質問だ.
IDEOからのメッセージは伝わっただろうか.
i.schoolだけでなく,日本に全体へのメッセージもあったのではないかと思う.

<追記>
Tim Brown のブログ
ではi.schoolとのディスカッションについて触れられていた.
そこでは,
"I left thinking that this elite group of students who would normally head off to the major corporations or into government might just decide to take a different, more entrepreneurial direction with their careers."
「いままでのように大企業とか高級官僚の道を歩むのではなく,もっと違った,起業家的な精神でキャリアを開拓してくれることに期待を感じた」

と述べられているように,ティムのいまの日本の若者に対する期待が書かれていた.
さて,この期待にこたえられるのだろうか.

<おすすめ図書>
今回のディスカッションを通じて,
デザイン思考やIDEOに興味を持った方にはぜひ今回のゲスト:ティム・ブラウン著者
デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)
をオススメする.私も読んだが非常に分かりやすく書かれており,楽しめると思う.



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